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顎の痛みや「カクッ」と鳴る音、口が開けにくいといった症状に悩まされていませんか?
これらは顎関節症と呼ばれる症状で、日本人の2人に1人は一度は経験するともいわれています。顎関節症は放置すると慢性的な痛みや食事の不自由さだけでなく、肩こりや頭痛にもつながることがあるため、適切な対応が必要です。その治療法のひとつとして注目されているのが「咬筋ボツリヌス療法」です。
今回は、顎関節症と咬筋の関係、そしてボツリヌス療法の役割についてご紹介します。

〇顎関節症の代表的な症状
顎関節症とは、あごの関節やその周囲の筋肉に負担がかかることで生じる不調の総称です。主な症状には以下のようなものがあります。
- 顎の痛み:食事のとき、会話のときに痛みを感じる。
- 関節音:口を開閉すると「カクッ」「ジャリッ」といった音がする。
- 開口障害:口が大きく開かず、指2本分程度しか開けられない。
これらの症状は軽度であれば自然に治まることもありますが、悪化すると日常生活に支障をきたすほど強い痛みを伴うことがあります。
〇咬筋の緊張が顎関節に与える影響
顎関節症の原因は複雑で、歯ぎしりや食いしばり、噛み合わせの不調和、ストレスなどが関与していると考えられています。特に重要なのが咬筋の緊張です。咬筋は、下あごの骨から頬にかけて存在する大きな筋肉で、ものを噛むときに大きな力を発揮します。しかしこの咬筋が慢性的に緊張していると、顎関節に余分な負担がかかり、炎症や関節円板のずれを引き起こしやすくなります。その結果、痛みや音、開口障害といった顎関節症の症状につながってしまうのです。
〇咬筋ボツリヌス療法による改善が期待できるケース
ここで登場するのが咬筋ボツリヌス療法です。ボツリヌスは筋肉の働きを一時的に弱める作用があり、美容医療では小顔治療として知られています。歯科領域では、過度に緊張した咬筋を緩める目的で用いられます。顎関節症においても、次のようなケースでは改善が期待できます。
- 食いしばりや歯ぎしりが強く、咬筋が硬く張っている場合
- 顎の痛みが咬筋の過緊張によって引き起こされている場合
- マウスピース治療を行っても症状が十分に軽減しない場合
咬筋が柔らかくなることで、顎関節への負担が減り、痛みや開閉時の違和感が和らぐ可能性があります。
〇他の治療法との違いと併用の可能性
顎関節症の治療には、マウスピース(スプリント)療法、理学療法(マッサージや温熱療法)、生活習慣の改善などさまざまな方法があります。これらは咬筋ボツリヌスとはアプローチが異なります。
- マウスピース:歯ぎしりや食いしばりによる歯と関節へのダメージを和らげる。
- 理学療法:筋肉や関節の柔軟性を高め、血流を促進する。
- 生活習慣改善:ストレスコントロールや正しい姿勢の習得。
一方で咬筋ボツリヌスは、直接的に筋肉の力を弱めるという点で特徴的です。したがって単独での効果が期待できる場合もあれば、マウスピースや理学療法と併用することで、より高い効果を発揮するケースもあります。
〇まとめ
顎関節症は、軽い違和感から始まり、進行すると強い痛みや口の開けにくさへと発展することがあります。咬筋の緊張が大きな要因のひとつである場合には、咬筋ボツリヌス療法が有効な選択肢となり得ます。ただし、顎関節症の原因は人それぞれ異なり、必ずしもすべての患者さんに適応できる治療法ではありません。マウスピースや生活習慣の見直しなど、他の治療と組み合わせて総合的にアプローチすることが大切です。
気になる症状が続くようであれば、西原ひだまり歯科までお気軽にご相談ください。
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